今野尚行




遭ったこともない人
行ったこともない場所
話したこともない言葉
聞いたこともない詩
感じたこともない痛み
包まれたこともない色
私は浮遊する 私というものが無くなるまで
ふと目を開けると わたしは先程と変わらない場所に足を付いている
歩いては行けない場所
歩いていては遭えない人
歩いているだけでは見られない景色
わたしの身体が半分透明になる
わたしの目は半分見えなくなる
わたしの足は半歩だけ先に進む


今野尚行